陶磁郎 48号[2006年10月16日発売]
特集◆あの陶芸家が、あなたのために器をつくります

伊勢崎晃一郎[いせざきこういちろう] 備前焼のワインクーラー 加藤委[かとうつぶさ] 野点のための茶碗

 形は、依頼主が予想していたものとはかなり違っていた。一般にアルミ製のワインクーラーといえば、バケツのような台形を逆さにした形に、両脇にリング状のもち手がある。しかし、焼き上がったものにはそのもち手がなく、托鉢(たくはつ)の鉢のような口縁部がやや内側に入った形となっている。

 電話を受けた加藤も即座に、その土地の土を使った茶碗でなければ意味がないだろう、と思ったという。
 そこで急遽、5月の終わり、あと二、三日で田植えが始まるという日に、加藤は越後妻有の地に足を踏み入れた。越後妻有の雰囲気を知り、土を探すためである。棚田と河岸段丘が拡がるこの土地を見て、激しい形よりは、おだやかな形の茶碗がよさそうだと判断したのだった。

加藤高宏[かとうたかひろ] 志野花生
依頼主――加藤さんの展覧会でも、志野の花生は久しく拝見していなかったような気がします。黄瀬戸の大きなものは、覚えていますが。
加藤――私は、茶碗を中心にやってきました。茶の世界観を背景にしている器、それが茶陶ですが、いまはそのなかでも茶碗が中心です。花器も同じような意味で、伝統的な茶室のなかでは、一番神聖な床の間に置かれるものです。いつかは、と思っていましたが……。
きわめつきの注文
鈴木五郎[すずきごろう] かまど 吉川水城[よしかわみずき] 洗面台
   かまど本体と煙突は青織部で、床の陶板は総織部。陶板は、土間のたたきと同一平面になっている。本体は、まず本体の形に成形し、それをランダムに破いて絵付けをしている。煙突は、ロクロ成形。絵は、続き文様になっている。    「黒釉枝垂桜文」の洗面台。鉢風に仕上げ、真んなかに栓のための穴を開けてある。素焼きした素地に、黄土(おうど)やベンガラなどを混ぜたものを塗ってもう一度素焼きし、芦沼石(あしぬまいし)を中心とした黒釉(くろぐすり、鉄釉)を掛けて本焼きする。その上から黄土で枝を描き、プラチナで花びらを、金でしべを描き、さらに本焼きをする。つまり、4回の焼成を経ている。
中村卓夫[なかむらたくお] 囲炉裏 澤清嗣[さわきよつぐ] 風呂
   この囲炉裏は、レストランの食事の場ともなっている。信楽の赤土を基本として、白土をたたきつけるようにして混ぜ、象嵌(ぞうがん)している。白土の部分にのみ透明釉を掛けて本焼きし、金を含めて上絵付けをし、3〜4回上絵焼成している。タタラで成形したあと、力を加えたり、立て掛けたりしているため、盤は複雑になっている。    風呂桶は、澤がいつも壺などに使っている土に別の細かい土を混ぜて成形している。厚みが厚みなので、乾燥に1カ月もかかったという。生掛けで信楽特有の緑釉を掛け、本焼きしている。床と腰回りにタイルとして使ったものは、信楽の登窯の棚板を澤がさらにもう一度、自らの登窯で焼成したもの。
陶磁郎 48号 紙面1 陶磁郎 48号 紙面2 陶磁郎 48号 紙面3 陶磁郎 48号 紙面4 陶磁郎 48号 紙面5
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